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神話学と宗教学

 神話学というのは、神話を解釈したり分析して再分類したりする学問であり、各神話の特徴や相違点から、その基盤となりうる宗教・心理・哲学の分野も横断しながら、関係を紐解こうとするものです。

 また、複数の神話間の相違点の比較研究は「比較神話学-Comparative Mythology-」といわれています。これに関連している学問として、歴史・考古・地誌学などの歴史的な分野、宗教・心理・哲学などの心的分野、文化人類・民族・言語・社会学などの社会的分野、文献・物語論と文学理論などの文学構造的視点の分野などがあります。 この「比較神話学」では、類似点を見つけまとめていけば人類の普遍的な発想の源が発見できるということに注目していて研究を進めていることが特徴的です。その普遍的発想の根源が「神話の種-protomythology-」とよばれています。

 

 宗教学についても、学問としての扱いの範囲は広く、「1つの宗教を深めていく形」、「他宗教と関連していく形」、「今の時代に即したものにしようとする形」など様々な取り組み・研究がみられます。また、神話学のように「比較宗教学」というものもあります。

 キリスト教は、複数の解釈・価値観により多くの宗派を出し、宗教革命や宗教戦争なども歴史的経緯があります。この革命や戦争の背景でも、そういった様々な研究としての宗教学が関係しており、「1つの宗教を深めていく形」や「今の時代に即したものにしようとする形」の研究の中で、宗派や考え方が分岐していったのであろうと考えられます。

 このことから、古代から宗教学が行われ続けていると捉えることができるでしょう。そして近代以降だと、1つの宗教を深めていく形の中、「神学」と「悪魔学」といったような同じ宗教内の「要素を専門的に追及する形」の研究も多くなってきたと言えます。

 

 もちろん、1つの宗教のみの研究でも他の宗教の影響は受けています。各原始宗教も、何かしらの他宗教・文化・神話に影響されてきているからです。

 逆に派生も改良も研究(追究)もなにもなされずに、完全孤立の文化としての神話・宗教があるのなら興味深いことと言えます。なぜならばそれは、オカルト的視点である「超古代文明」といわれるものが、現実にあったということの証明にあるかもしれないからです。

 

 「比較神話学」かどうかは、比較して相違点を見出すために他宗教にふれるのか、それとも、その宗教の発展の為に他宗教を参考にしようとするのか、といった目的の違いを判別することでしょう。

 19世紀は神話解釈において比較神話学的手法が活発でした。しかし、今では「普遍性探求」行為自体が疑問視されはじめています。心理学的アプローチとしては、神話や昔話から人間の心理の共通性・普遍性を分析する研究はありますが、現代のグローバル化や世界的な発展において、未来志向型の学問とは言えないためです。科学や考古学などの学問では、常に国際的な統合的で共通的な知識・思考と、未来志向的な学問発展の理念が研究者にはあります。

 つまり、比較検討の手法は、現代に生きる未来志向の研究者からすれば、課題があると考えられます。新しい神話に対する捉え方や検討手法を提案していく必要があります。そこで、「統合神話学-Holophrastic Mythology-」という視点は、今後の世界・社会における神話の位置を再改革し、神話検証の新しい手法の一つとして、必要な概念になることを期待しています。

 

 

統合神話学の視点による宗教学の分類 

客観的に宗教学の体系内容や構成をみると、以下の3つの視点に分けられると考えられます。

 ①専門性追究

 ➁拡張性追究

 ③普遍性追究

  +④統一性追究

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①ある宗教内を深めていくなかで特定の分野・要素・用語などに注目したもの(専門性追究)

②ある宗教を深めていくなかで宗派となったもの(拡張性追究)

③異なる宗教や関連宗教の分野・要素・用語などから人類の普遍性を見出そうとするもの(普遍性追究、比較宗教学)

 この3視点に、統合神話学の視点を追加していくものとします。

➃あらゆる宗教や神話を一つの統合的な「人類の宗教」と捉えたもの、或いは、国際的で統合的なものにしようとする取り組み(統一性追究、統合神話学)

 

 

 これらの視点での研究・思考がメインになっていると考えられます。以下が、具体的なイメージ例になります。

 

【①専門性追究】

・悪魔学

・同じキリスト教内での唯一神・天使・悪魔(キリスト)について追究

・ゾロアスター教(拝火教)の天使・悪魔についての追究

・イスラム教での各神魔の関係性について追究

・神道の天津神・国津神の研究

など。

※宗派別にみるのではなく、同じ世界観・宗教観の中にあるキーワード別(神魔別なども)に宗教内でみていく形式などのこと。

 

【②拡張性追究】

・キリスト教のカトリック派・ルーター派(キリスト・宗派別)

・仏教の曹洞宗・日蓮宗(仏教・宗派別)

・仏教の座禅をくむと経を唱えるについて(仏教・大きい括りの宗派)

・仏教の唱えるものについて。浄土宗系と日蓮宗系など(仏教・南無阿弥陀仏と南妙法蓮華経系)

・仏教の大乗と小乗の思想について(仏教・違う総称別)

など。

 

【③普遍性追究】

・キリスト教、ユダヤ教、ゾロアスター教、イスラム教

・バラモン教、ヒンドゥー、仏教

・一神教と多神教について

など。

 また、③は「比較神話学」として広がる可能性があり、より幅広く比較したり括りつけたりすることができます。

・イスラム教と古代アラビア伝説

・インド神話とヒンドゥー教

・中国思想と中国神話

・ゾロアスター教・ヒンドゥー教(多神教研究)

・二元論と多神教(善悪の神、八百万の神)・アニミズム(精霊信仰)

など。

 

【④統一性追究】

・クトゥルフ神話(ギリシャ神話、エジプト神話、グノーシス主義思考、土着宗教など)

・一部の漫画・アニメ等の物語(漫画・アニメ等を最も最新で歴史の浅い思想・文化を扱った場合)

・???

※考え方としてはいくらかは、現代に根付いているものは上記のようにあるが、未だ学問としての確立は見られていない。